第23章 【外伝 村人B、衝撃の回想】
谷地仁花は今でも思い出す。いまや隣の席にいるのが当たり前の友人、縁下美沙がはじめてクラスに来た時の事を。
とにかくその日の谷地はガクガクブルブルしていた。今日から1-5に編入生が来るという。しかしその編入生の席はよりによって自分の隣にされているのだ。谷地はそれはもう動揺しまくった。どうしよう編入生さんのフォローなんて私に出来るのかなそもそもどんな人だろ優しい人ならいいけどハッ実は前の学校で問題起こしたみたいな怖い人だったらどうしよおおおおおおお。
内心でパニックになる谷地には同情を禁じ得ないがしかし脳内で古い漫画に出てくるようなスカートのやたら長い不良少女を思い浮かべているのはいかがなものか。そうして谷地が1人あわあわしている間に時間が来て朝礼が始まり、噂の編入生がやってきたのだった。
担任に連れられて教室に入ってきた編入生は幸い谷地が思うよりずっと大人しそうな人物だった。全体的に細っこく所謂美人ではないが谷地は可愛らしい人だなと思う。メインの鞄の他に肩から布製のポーチのようなものを斜めがけしているのが気になった。あれなんだろ、ハンカチでも入れているのかな。クラスの連中もまた同じようなところを気にしており顔を見合わせている連中もいる。アレ何提げてんだ、おいもしかしてスマホケースじゃね。ヒソヒソと聞こえるそれを聞きながらあースマホかーなるほどーと谷地はボンヤリ思う。クラスの連中は他にもあんまり可愛くねーな、つか地味、こんな時期に編入って珍しいね、訳ありかな、何かお堅そうなどと好き勝手言っていたが谷地の耳には入っていない。やがて担任が編入生に自己紹介をするように言う。編入生はすうっと前を向いて見た目より響く声で言った。