第17章 【偏り】
という訳で幾日(いくにち)か経った頃である。1-5では数学の授業があってまた行われた小テストが返却されていたところだった。縁下、と呼ばれた美沙は教壇の方へいってテストを受け取る。数学の担当がボソッと縁下今回どうしたんだと呟く。美沙はいやまぁと曖昧に笑うしかなかった。
「美沙さん、何かあったの。」
席に戻ると隣の谷地がコソッと言う。
「こないだより点数マシやから先生が気にしはったみたい。」
「へー、頑張ったんだね。」
「頑張った言うか」
「どうしたの。」
「この前の小テストの点数バレて兄さんにとっ捕まって特訓された。」
「そっ、それはなんと言うか、あわわわ。」
わなわなと震える谷地、美沙はせやろと呟く。
「次は生物の特訓されそう。」
「何だか順繰りだね。」
「偏り無くせて。」
「なるほど。」
アハハと小さく苦笑する谷地、ううと唸る美沙、しかしふと手元の小テストの点数を見る。帰ったら兄さんに報告やなと美沙は思う。喜んでくれるやろかなどと考える美沙の顔はいつもより少し緩んでいて周辺の席の奴らがおや、という目で見ていた。
次章に続く