第35章 【三度目の終わりと少しの未来の物語】
兄妹から始まって踏み込んだ縁下力と美沙の人生はまだこれからなのだが時が近づいてきた。
しかし幕引きまでにもうほんの少しだけ、未来の夢をご覧いただこう。
「今度は誰を庇ったんだ。」
「おかんにも言われたけど何で庇った限定やねん。」
「お前が怪我して帰ってくるって事は他にないだろ。」
「クラスの女子、馬鹿たれがいじめとったから割って入ったらこないなった。俺から手ェは出してへん。」
「しょうがない奴だな。」
「怒っとん。」
「まさか、勇気ある奴だなと思って。」
「助けてほしいんやなってわかっとんのに逃げてどないすんねん。すぐそこに先生おらんかったし。」
「ハハハっ。」
「何やねん。」
「馬鹿にしてるんじゃないよ、お前母さんに似たな。」
「顔はおとんやけどな。」
「それな、成田と木下が立てたフラグ回収しちまったな。それとおとんはやめろ、母さんに知れたら怒られるぞ。」
「めんどいなぁ。つか高校の時何しとってん。」
「めんどいもやめろ母さんは使ってないのにどこで覚えたんだ父さんの昔の事は気にしない事。」
「都合の悪い事隠しとるの丸出しやんけ。」
「何か言ったか。」
「別に。」
「良くない方の言葉づかいを続けるんならそろそろ母さんを呼んで関西弁使うの禁止してもらうからな。」
「そ、その手には乗らんからなっ、おか、お母さんは今頃データベースと格闘中やし。」
「まあ話戻して」
「我が父ながら怖いわ。」
「その一直線なとこがお前のいいところだけど本当に逃げなきゃならない時は見極めろよ、心配になる。」
「お母、さんが妹やった時も心配やったんか。」
「ああ。そこが好きで結局こうなった訳だけどお前には苦労かけてるかもな。」
「俺はええねん。俺もお父さんらも何も悪い事してへんやろ。」
「そうかい、ありがとう。」
「あー疲れた、やっと不具合なんとかなった。あれ、2人共どないしたん。」
「いや別に。」
「お父さんが元イモウトについてのろけとった。」
「馬鹿っ、妙な事を言うんじゃないっ。」
「力さん、どういう事。」
「勘弁してくれよ。」
捨て子の薬丸から縁下妹になった少女の長い物語はこれで終わる。
こぼれ落ちた夢の欠片はまたいつか。
エンノシタイモウト 第三部 完