第4章 【まるでサイボーグ】
「一応ここまで知っとるけど現実にそんなもん持つんは絶対嫌。触りたくもない。ちゅうかごめん、月島がわざわざそんなん言うてくるってことは部活で兄さんに何かあったん。」
「別に。」
「ツッキーは心配してるんだよ。」
「山口うるさい。」
「それ何回も聞いたな、せやけど何でなん。」
美沙は首をかしげる。多分自分と義兄が依存し合っていることに対してだろうがしかしあまり人の事に踏み込みたがらない感じの月島がそこまで心配する背景がまったくわからない。
「ツッキーは、」
山口が言いかけるが月島がやめろ、と遮(さえぎ)った。
「僕の事は関係ない。とりあえずアンタら兄妹、ますますおかしいよ。」
眼鏡を押し上げながら月島は言った。
「後で泣いても知らないから。」
あの月島にここまで言われてはさすがの美沙も黙ってはいられない。意地悪するつもりはなく純粋に不思議になってきた美沙はとうとう口にした。
「お兄さん関係で何かあったん。」
人の過去をえぐる趣味はない美沙がとうとう聞いてきた事は月島に衝撃を与えたようだった。
「別に。」
月島は言ったがその声が苦々しげであることに美沙は気づいた。
「ごめん、いらんこと言うたんやね。ありがとう。」
少し後悔した美沙はそう言ってその場を駆け足で去った。
後には月島と山口が残された。
「ツッキー、あのさ」
「あいつの頭の中どーなってんの。」
月島が信じらんないと言った調子で呟く。
「あははは、美沙さんってホント色々知ってるね。それよりさ、ツッキー。」
山口が躊躇(とまど)いがちに言った。
「その、流石に美沙さんわかんないんじゃないかな。ツッキーのことそんなに知ってる訳じゃないし。」
「別に、教えてやる必要ないし。とりあえず警告されてるってのはあいつだってわかってるみたいだし。」
「でもツッキー、俺ツッキーが憎まれ役みたいになるの嫌だよ。」
「山口お前馬鹿なの、そんなお人好しな事する訳ないデショ。あいつがそれでキレてくるような奴ならいちいち言わないから。」
山口はキョトンとした。