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【短編集】ILY【R18】

第4章 手を伸ばして*グリムジョー


ムカつく奴だ。
こいつの顔を見ているとイライラする。

可愛い奴だ。
こいつの顔を見ていると愛してるって実感する。

俺は不器用なんだよ。
そうこいつに伝えたら、顔に唾をかけられ力いっぱい顔面を殴られた。

「この嘘つき!私のことなんてこれっぽっちも愛してないくせに!」

俺を罵るシーナの顔が瞼の裏に焼き付いて、俺を更に追い詰める。

「っ!テメェは黙って俺に仕えてれば良いんだよ!」

何故、本当は愛してるって言えない?
心理と口から出た言葉の矛盾と、シーナの俺に対する態度に、一瞬で頭に血が上った俺は、固く握った拳でシーナの顔を殴りつけた。

バギッ!

耳に響く痛い音がして、シーナは顔の左半分を手で覆って床に倒れ込んだ。

シーナの右目から流れるとめどない涙。
悔しさに唇を噛んで、俺を見上げて睨む。

「…ホント糞野郎…どこまで私を苦しめるつもりなのよ…!」

シーナはどれだけ俺に殴られても、もう逃げなくなった。
いや、逃げないように、引き留めるために俺が殴るからだ。

もっと俺を憎め。
俺のことしか考えられない女にしてやる。

歪んだ愛情。

だけどこいつは俺の暴力が怖いから俺のそばにいるんじゃない。
俺の過去を知っている。
俺の傷を癒したいと、こいつは初めに言った。
俺には自分しかいない。助けるのは自分だ。
そう自負しているから、俺から離れない。

俺はそのことを知っている。

知っていてもなお、知っているからこそ、俺から去って欲しくない。殴って脅迫して、束縛する。

愛してるんだよ。

これがお前への愛なんだよ。

俺のことが憎くてたまらない顔をした、シーナの首を掴んでベッドに放り投げた。
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