第2章 好きなのに*六道恭平
右手でれんの両手を頭の上で縫とめ、上気して紅い頬を左手で撫でる。キスをしようと体を前に傾ければベッドが軋んで、シーツに何本もの波が走る。
今から始まる、人生で一番満たされる瞬間に胸が躍る。
キスだけで恥ずかしいと耳まで赤く染めてしまう、愛しくて仕方がない俺の彼女。
「れん…可愛い。愛してる…。」
耳元で甘く囁いて、れんの柔らかい唇に吸い付く。
「ふっ…ん…」
息まで持っていきそうな勢いでれんの唇を味わう。
さすがに苦しくなってきたのか、俺の胸を力の抜けた手で押し返そうとしてくるが、こういう時ほど意地悪をしたくなるのが俺ってもんで。
少しだけ唇を離し、れんが口を開いて酸素を取り込んだ瞬間に、またキスをする。しかしさっきと違うのは舌をれんの舌と絡ませた所。
不意を突かれて固まるれんの舌を、ゆっくり舐め、溶かしてゆく。
「んん…んぅっ」
もうどっちの唾液かもわからないぐらいに絡んだ舌を、吸い、れんの全てをも奪い去りそうな、熱く蕩けるキスに酔いしれる。
「ぷはぁっ、恭平さ、ん…」
まだキスしかしていないのに、既にれんの目はトロンとしていて、悦楽の涙を目尻に溜めている。
「っ…そんな目で見つめられると、止まらなくなるだろ…」
「そんな、わかんな…んぁっ!」
理性なんてとうに崩壊して、俺は気づけばれんが気を失って泥のように眠るまで、その華奢な身体に想いを刻みつけていた。
なのに、それぐらい好きで愛しいのに、どうしてこんなにもすれ違ってしまったのか…。