第3章 気付くのはいつも突然*黄瀬涼太
今となっては懐かしい海常高校を卒業してからはや五年。
芸能界でモデルやタレント、俳優をこなす黄瀬涼太。だが芸能界という常に人の目に晒される仕事は、決して楽なものではなく、プレッシャーやストレスを彼はいつも抱えていた。
そんな黄瀬のマネージャーは一つ年上の、ルックスはそこそこの女性だった。
「ったく…マジでむかつくッス…!」
取材を終えた黄瀬は先程の現場にいた、態度の悪いリポーターに腹を立てて、楽屋に戻るなりソファにドカッともたれかかって愚痴をこぼした。
「でも上手く受け答えできてたし、もういいんじゃないのかな…なんて、あははは…。」
この後のスケジュールを携帯で確認しながら、スーツに身を包んだれんが、ドアの前で黄瀬の怒りを鎮めようと柔らかく言い返す。
「どこがッスか!バスケできてイケメンなんて、きっとモテモテだったんじゃないんですか?確かに女の子のファンは多かったです。ファンだけで彼女は居なかったんですね〜…って、完全にバカにしてるッスよ!他にも…」
「ま、まぁまぁ落ち着いて。次の深夜番組のロケまで一時間あるし、ゆっくり休憩すればいいよ。」
「ふーん…。」
黄瀬がただストレスだけでイライラしていないことは、れんも解っていた。恋愛が自由にできない芸能界で、もしスキャンダルがあれば芸能人生に危機が訪れてしまうため、仕事が増えたここ一年近く、性欲処理をしていないのだ。
だから一ヶ月前、れんは自ら名乗り出たのだった。