第18章 感激*安室透
「わかりました。」
肩の近くを深く切ってしまったから、袖を捲っても傷口は露出しない。
そこで僕も納得してシャツのボタンを上から外していったのに、彼女は僕から目を逸らして顔を紅潮させる。
「…どうしたんですか?顔、赤いですよ。」
「―――!いや、何でもないです。」
自分から脱いでくれって言ったのに…
既に何度も体を重ねているのに初々しい反応をされると心が騒いで仕方ない。
彼女の反応がこうも可愛いいと、ちょっとからかってみたくなるのは男の性だろうか。
「ほら…手当てしてくれるんですよね?」
バサリと落ちたシャツの音に肩を震わせた彼女は、今から戦いにでも行くのかと思うほどの顔つきで僕の方を振り返り、消毒液を染み込ませたコットンを傷へと近づけた。
なるべく僕の体を見ないようにと目線を横に向けているのが彼女らしい。
「やっぱり痛そうですね…包帯もしっかり巻かないと…」
「フフ、熱心でありがたいですね。」
何度か傷の上で跳ねたコットンをゴミ箱に捨て、丁寧な手つきで包帯を巻いてくれる彼女の横顔を見てみる。
そしたらもう我慢ができなくて…堰を切ったように欲望が全身を支配した。
「キャ…!?え、零くん…!?」
「れんさん、いいですよね…?」
「へっ、!あ、あの…!」
「しー…」
突然の展開に戸惑う彼女の小さな唇を捕まえて、無理やり黙らせたらソファに彼女を押し倒す。
れんさんの寝間着のTシャツの上から温かな柔肌を撫で、息継ぎで唇が離れた瞬間に彼女が僕の胸を押し返そうと腕を伸ばす。
「零くん、怪我してるし、疲れてるんじゃ…!」
「僕の体力を嘗めてもらっちゃ困りますよ。それにこんな怪我、全然何とも無いですよ。何なら…」
焦るれんさんの顔にググっと近付いて、赤く色づいた頬に少しだけ視線を送る。
そして目を捉えると、潤んだ彼女の瞳に意地悪な顔をした僕が映った。
「試してみますか?」