第18章 感激*安室透
内容の濃い1日…いや、数日を過ごした後の異様に高いテンションが僕の足取りを軽くする。
沢山の出来事を思い出せば思い出すほど夢のようで、若干上の空になりながら締まりの無い顔で玄関の扉を開けた。
「ただいま。」
僕が帰ってきたのは都内のとあるマンション。
ちなみに僕の家じゃないけど、一歩を踏み入れた時に感じる安心感は自分の家以上だ。
理由はきっと、僕の恋人であるれんさんが住んでいるから。
「ん…え、零くん…!大丈夫…!?」
「ああ。心配ないよ。」
リビングに入ってきた僕を見て、一目散に駆けてくれるれんさん。
ソファで居眠りしていた状態からの切り替えが速すぎて、相当僕のことを心配していたんだなって思うと愛しくて仕方ない。
丸みを帯びた彼女の声はいつだって、僕を包み込むように優しく響く。
この頃ずっとエキサイティングな日常を送ってきたから、溜まっていた疲れがどっと…飛んで行った気がする。
だけどれんさんの目付きが突然鋭くなって、何だろうと彼女の視線を追うと、そこには血がスーツに滲んだ左腕。
「それ、痛くない…?」
「あはは、全然痛くないよ。」
痛みにも慣れたし、全く気にもしてなかったから彼女に見られても「あ、そういや怪我しちゃってたな」程度の認識だったけど、彼女はすごく焦り始めて自分の部屋へと走ってゆく。
「手当て、私がするからそこに座ってて!」
「あ、ああ。」
「あと上着も脱いでて!」
雑な止血で乗り切るつもりだったけど、れんさんはもちろん許してくれない。
ま、わかってたことだけど。
僕は彼女の言う通り、ソファに腰かけて上着を脱いだ。
すぐに救急箱を抱えてバタバタと戻ってきたれんさんは、床に膝をついて僕の手を取り傷を間近で観察する。
「結構深いね…腕まくるのしんどそうだから、シャツも脱いでもらっていい?」