第13章 濡色*爆豪勝己
『今から作戦を実行する』
今届いたメッセージ文を見て、様々な記憶を頭の中で呼び起こす。
…たまたま、本当にたまたま調べていく内に分かったんだ。
陽月が、連続殺人犯の妻だということが。
その時俺は…情けないことに、陽月の身を案じてしまった。
もし戦闘になった時、その場に陽月が居たらと思うと背筋が凍っちまった。
幼馴染みで、俺の特別枠に居たたった一人の女だったから…。
どうにかあの殺人犯から遠ざけることはできないか…
考え抜いた結果、陽月を人質という名目で俺の元に置けばいいんだと…そうすれば、危害は及ばないはずだと思った。
『分かった』
返信を短く済ませ、着ていたパーカーを陽月にバサリと掛ける。
静かに泣き続ける姿を横目で流し、俺は部屋の鍵を外からかけた。
窓はそもそも鍵なんて無いし開閉できるタイプでもない。
(ロープが解けたとしても、あの格好で窓を割って飛び降りるのは不可能…逃げるなんて選択肢は無ぇ…)
…どうせ俺からは逃げられない。
真夜中の街を歩きながら、俺はどこか上の空で前を見つめていた。
ずっと陽月を想って…ずっと陽月のヒーローになりたくて…
なのに、お前は俺のことが大嫌いで…いつも侮蔑的な態度を取っていた。
陽月を救うために行動を起こしたのに、結局暴走しちまった。
でも、これで良かったんだよ…
どうせ俺は
お前の悪役にしかなれねぇんだ………
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