第9章 傷跡は一生消せない
銀さん目線
多串君の部屋に入ると、そこには鬼の形相をした男の姿があった。
土「なんでてめーがここにいる」
銀「瑠維の事でちょっと話があってね」
土「ああ?なんでてめーと話さなきゃなんねーんだよ」
そう言って、土方は煙草を取り出した。
銀「俺さ、瑠維のこと襲ったんだよな」
土「・・・は?・・・今、なんつった」
銀「だから、瑠維のこと襲ったって・・・」
土「てめぇふざけてんのか!?」
胸ぐらをつかまれ、鋭い双眸で睨みつけられる。刀を持っていたら、間違いなく抜かれていただろう。
銀「・・・よし・・・本気みたいだな」
土「なにがだよ?」
銀「瑠維の事、本気なんだよな?」
真剣な目で土方を見ると、土方は手を放した。
銀「一つ質問する。これに答えられねーんなら瑠維と別れろ」
土「どういうことだ」
銀「なんで沖田君の姉ちゃんは受け入れられなくて、瑠維は受け入れられたんだ?」
きっと瑠維自身も気になってることだろう。
土方は少し目線を落とし、瑠維には言うなよ、と前置きした。
土「あいつ・・・瑠維は本当に強い女だ。剣筋もいいし、喧嘩も強い。でも、あいつ笑ってねーんだよ・・・バカなことしてんのは、自分の気を紛らわすため。一人になると、どうしようもない喪失感に襲われてんだと思う」
ちゃんと解ってるじゃねーか・・・質問の答えにはなってねーがな。
土「悲しい目ェしてんだよ。誰にも気づかれないように必死で隠し通してる・・・瑠維の過去に何があったかしらねーが・・・触れたら消えてしまいそうな顔で笑ってほしくねー・・・苦しいって言えなくても態度に出して欲しいんだ・・・」