第29章 カリスマ性は大事
神威side
姉御は本当にすごい。
普段は集まれだなんて命令を出しても聞かないのに、姉御の名前を出せば一発で済む。
その理由は主に二つ。
一つ目は、姉御の仕出かすことはいつだって恐ろしく馬鹿げている。今回だってそうだ。でもそれを、可能にするのが姉御。馬鹿げていると思っても、その裏には恐ろしいくらいに計算されつくされた計画と、姉御自身の言葉によってすべて成功させられる。
二つ目は、姉御を利用しているから。本当に忠誠を誓っているのは第七師団のみ。俺らは姉御に拾われたからね。それ以外は全員利用している。だが姉御はそれも計算のうち。その団員を全て利用し束ねている。裏切る者がいれば、容赦なく斬り殺す。でもそれに見合った報酬をくれるのも確か。
神「ほんと・・・・・恐ろしいよ」
今だって全員が姉御に釘付けだ。俺は姉御の隣に居るからこそわかる。姉御にはこの計画性と、カリスマ性・・・・・・それに美貌ってのがあるからね。
姉御はマイクを持つと、スイッチを入れ息を吸い込んだ。
そして眼をつぶり、姉御が眼を開ける。そこには春雨の提督らしい、しっかりとした顔つきが見えた。
『噂には聞いているだろうが・・・・・・私から直接言っておくことにする』
姉御の声は酷く冷酷でドスがきいている。
『点心が地球に眼を付けた。これは、我らが地球と関わりの深いことからのものだと見られる。このままでは、我らのメンツが・・・・・いや・・・・・貴様ら全員の顔が立たぬことだろう。銀河系最大の・・・・・天下の春雨が、こんなものでは情けがない』
どこからこんなに思いもしない言葉が出てくるんだろう?
『我らの悪名を取り戻そうではないか!地球の者どもと協力する・・・・・不満のある者も多いだろう。だが、地球の者どもだけの為にこの名を捨てるのは酷く惜しい。しかし、取り返せば済む話!このままあやつらの・・・・・好きにはさせておけん!』
そこで姉御は声音を一変させる。表情も柔らかく微笑んでいる。
『もちろん、私についてきてくれた者には相応の対価を支払おう。悪名高くなりたい者は私についてきてくれ』
姉御はそう言うと、マイクを置き去って行った。
俺はそのマイクを取り、スイッチを入れる。
神「俺は就いていくよ?姉御には・・・・・失敗なんてないからね?」
俺も姉御の後を追って行った。