第27章 故郷は何か知らないけど・・・・いいもんだ
神威side
姉御は見事と言っていい程言いくるめる。
この分だと、もうすでに心配はいらない。
だが、姉御の顔は笑っていなかった。
悲しそうに・・・・苦しそうに笑っていた。
俺のしていることは姉御を苦しめること。そんなことはわかっている。
だからと言って、引くことは出来ない。
初めて思った。こんなにも人のことが愛おしいと感じたのは。護りたい、傍に置いておきたい。
たとえ・・・・・・それが姉御を苦しめることになっても・・・・
手放したくないんだ。
姉御は戻りたいと願っているはず。
でもそれを口に出さず、俺たちに自然に振る舞ってくれるのは姉御の優しさ。
だからこそ・・・・ダメなんだ。
女も酒も・・・・いらなかった。
でも、失ってみて気づいた。
俺には・・・・姉御が必要だと。