第25章 ありがとう。って何か寂しくない?
私は神威と晋助の背中を追って歩いてゆく。
その時、風が激しく吹き、どこからか桜の花びらが舞い散った。
『・・・・綺麗・・・』
手を差し出すと、その上に花びらが一枚舞い落ちた。
それを見つめていると、ふと真選組にいたときの記憶が蘇ってきた。それは、ミツバさんが亡くなったすぐ、トシと二人で話した事だった。
土「桜ってェのは・・・・儚いな」
随分と参っていたのだろう。しみじみと噛みしめるように言ってたっけ・・・・
私はその時こう返した。
『儚いなからこそ・・・・・桜は美しいんだよ。その一瞬のために、一年間養分を溜めてるの。だからこそ美しく、儚い』
そう言うと、トシは笑った。どうしてかは解らない。
いつか聞こうと思ってた・・・・・でも今となってはもう聞く手だてもない。
ずっと一緒に居たかった。
トシの隣で笑っていたかった。
でもそんな事が許せられるわけがなかったんだ。
私は汚い。人を殺す為、生まれてきたようなものなんだから・・・・
私があんなに綺麗な人たちと同じようには進めない。
一時期はそんな風には考えてなかった。
みんなと同じだと思っていたんだ。
でも違った。
私は桜。ほんの少しの間しか美しくいられない。
そして私はもう二度と咲くことは出来ないのだ・・・・・・
アナタの前では・・・・アナタの記憶の中では、せめて綺麗な私でいたい。
愛していたから・・・・・・心から。
お願いトシ。
私のことは忘れて?
思い出にして・・・・・葬って。憎んでもいい、恨んだっていい。
私はもう、アナタの知ってる私じゃないから。
でも、これだけは言わせて?
私に愛を教えてくれて・・・・・愛してくれて・・・・・
楽しくて・・・・・楽し過ぎて・・・・・
嫌なことは全部忘れられたんだ。
私はアナタをこれからも愛しています。
アナタの少し照れたように笑った顔も・・・・怒った顔も大好きでした。
ありがとう。そして、
永遠にさようなら。