第2章 聞いてないわ
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「あっちゃぁ…」
校舎を出て早々と帰ろうとした私だったが、校門までのごった返したこの状況を見て、思わず自分らしからぬ言葉を漏らした。
朝は何もなく、ただ一本の桜並木だった校門までの道のりは、今現在、部活勧誘のビラ配りで進むに進めない。
「…お。君、超可愛いじゃん。マネージャーとかどう?」
「野球部には勿体ねーよ!サッカー部はどう?イケメンいるぜ?」
「いやいや…そこはバレー部っしょ!」
過去にミス帝光に輝き、”高嶺の華”と呼ばれ続けた私の元にも勿論、勧誘はやってくる。
それも全てマネージャーとしての勧誘。
「…ごめんなさい。私もう何部に入るか決めているの」
得意技の営業スマイルを張り付けて答えると、私のまわりに群がる彼らは一瞬時を止める。
「…え、あ…いや…そっか…」
「そんな…あ、そっか…」
「本当にごめんなさい」
たじたじになる彼らに私は、少し眉を下げて困ったように笑って見せた。
「決めてんならしゃーねーな…ちなみに何部?」
バレー部のジャージを着た彼に問いかけられる。