第17章 もうやめて
点差20点のまま第三クオーターは終了した。
「あと十分だ。慌てることはない。多少予想外の反撃もあったが、予想以上の傷を負ったわけではない。このままいけばいい。ただし間違えるな。このままとは、あくまでこのまま攻める、と言うことだ。今の点差を守ろうと思うな。誠凛相手にそれは寧ろ一番危険な心構えだ。最後まで攻めて、誠凛を叩き潰してこい!」
「「「おおう」」」
ベンチに戻った五人に対して監督は言った。
「玲央、向こうは日向が出てくるようだ…だが、4Fでも決して油断するな。永吉、木吉の眼はまだ死んでいない。玲央同様、気を引き締めろ。小太郎、いつまで大人しくしているつもりだ。まだ点を取ってもらうぞ」
征十郎は、黛さんを除く三人にそう言うと、バッシュをキュッと音をたててベンチを立った。
「行くぞ。勝つのは洛山、絶対は僕だ」
その姿は…帝光時代そのもので、心が痛んで仕方ない。
残り十分。
果たして彼を止めることが、あの頃に戻すことはできるの…?
「黛さん」
他の四人に続いきてベンチを立った黛さんに私は声を掛ける。
黛さんは何だ?とでも言いたげな表情で私に振り返った。
「征十郎を…よろしくお願いします」
「は?それってどういう…」
深々と頭を下げる私を訝しげに見ながらも、顔をあげた私の表情を見て、黛さんは言葉を失ったように何も言わなかった。
『休憩終了です』
大きな声出しをして出てきた誠凛。
いつもと変わらぬ涼しい表情で迎え撃つ洛山。
最後の十分間…。