第16章 奇跡は起きない
ボールを持ったまま跳び、ボールを叩き込んだ火神だったが、そのダンクはゴールに嫌われてしまう。
「征十郎がそう易々と抜かれるわけないじゃないですか。わざと抜かせてドライブを外に膨らませ、ゴールとの距離をずらしたんです」
「…なるほど」
点差は徐々に縮まり、さらに痛恨のミスを犯した火神は雑念が出てきはじめる。
このままではゾーンはアッサリ解けるだろう。
そして、二度目の征十郎対火神。
ここで負ければ、確実に火神のゾーンは切れてしまう。
「…あまり僕をイラつかせるな」
「火神!?」
一度は黄瀬の『完全無欠の模倣』によるアンクルブレイクに耐えている、とはいっても、今回は相手が悪い。
「贋物と本物、比べられることすら不愉快だ。頭が高いぞ」
倒れた火神を避け、征十郎はゴールへ向かった。
それを伊月さんがバックチップでボールを奪おうとするも、一歩及ばずボールはレオ姉にパスされる。
シュートを止めようと木吉さんも跳ぶが、レオ姉はダブルクラッチで躱した。
「(ダメだわ…このままじゃ…)」
これが最後のチャンスなのに…!
私が強く目を瞑った、その瞬間。
レオ姉のシュートは水戸部さんにブロックされた。
「ふぅ…」
何とか窮地を回避した誠凛に、私は誰にも聞こえないほど小さく息をついた。