第16章 奇跡は起きない
そうこうしている内に火神は二本目となるダンクを叩き込んだ。
「(やっぱりゾーンの攻撃力は桁違いだわ。だけど…)」
ゾーンは体力の消耗が著しい。
このままでは、試合終了まではおろか、前半終了時まで体力を持たせることは不可能だ。
この試合…火神なしで誠凛が勝てるほど甘いものではないというのに…。
『誠凛、選手交代です』
「黒子君、交代!」
「え」
リコさんはテツ君と水戸部さんを交代させた。
「なるほど…折角ゾーンに入ったんだから、このまま使う…ってことね」
少しでも火神の体力を温存させるために、OFを火神にDFを二年生中心に攻める作戦。
だが、それよりも気になるのは…テツ君が交代したことによって聞こえてくる、ギャラリーからの声だ。
目立ってはいけない、見えるはずはない『幻の六人目』の特性はもうない。
再開された試合での火神のスピードは速いなんてものではなく、コタちゃんではついて行けないほど。
「は!?」
「え!?」
「そこから跳ぶってまさか…流星のダンク三発目ー!?」
フリースローラインから踏み切る火神。
いくらゾーンに入り、OFに集中したからとは言っても、試合開始初っ端からダンクの連発なんて信じられない…。
「同じ技何度もくらうか!来るのが分かれば…最高到達点に上がる前に潰す!!」
永ちゃんとレオ姉は火神の前に立ちはだかり、止めようと跳んだ。
「「なっ!?」」
しかし、火神はダンクをフェイクに二人を躱してレイアップ。
それはもう、巧い。の一言に尽きる。
「よぉし、ディフェンス!一本止めるぞ!!誠凛を火神だけだと思うなよ!!」
日向さんの声で火神以外の誠凛の選手ものってくる。