第15章 洛山のマネージャー
「…藍川さん」
アップ終了時間が迫り、ボールを片づけ始めていた私の元へテツ君が駆け寄ってきた。
「昨日は大丈夫でしたか?」
「ええ…迷惑をかけてごめんなさい。どうにかなったわ」
笑う気力なんてなかったけど、今できる笑みを張り付けてテツ君に微笑みかけた。
「藍川さん。僕は正直、あの頃のあなたが嫌いでした。皆がやってることを受け入れ、ただ傍観しているあなたが」
真剣な顔で言うテツ君。
あんなの嫌われて当然だ。
あの頃の私は、何もできなかった。
ただ…傍観して、傷つくテツ君とさっちゃんを見て見ぬフリばかりだった。
「でも気づいたんです。傍観していたのは藍川さんだけじゃない…僕も同じでした。そして、あなたは僕以上に苦しんでいたんだと」
「テツ君…」
「僕が必ず赤司君をあの頃に戻してみせます。待っていてください」
力強く言い放ったテツ君の表情は、あの頃のもので、私もフッと笑みを零した。
「…お願いします。もう…テツ君しかいないの」
私は深々とテツ君に頭を下げた。
彼が、最後の望み。
もう一度、あの頃の征十郎に…。