第14章 できないわ
インターバルに入り、私たちは一旦ベンチを離れ、控室へと戻った。
私たち洛山とすれ違うのは、テツ君の誠凛。
「…やあ…開会式以来だね、テツヤ」
「…はい、赤司君」
洛山一行が通り過ぎてゆく中、征十郎だけがその場に立ち止まっていた。
「よう、まさか忘れてねーだろーな?開会式は随分物騒なマネしてくれたな。黄瀬も…そしてお前もぶっ倒す!」
畏れ多くも征十郎に喧嘩を吹っかけているのは、火神大我。
その様子に私は、嫌な予感が頭をよぎり、彼らの数歩前で立ち止まる。
「勿論覚えているよ、火神大我。実力も評価している…だが、一つ忠告しておこう」
「…征十郎?」
背後から聞こえる冷たい声に、私は振り返る。
永ちゃんと黛さんもそれ気づいたのか、こちらに目を向けた。
「僕と目線を変えずに話すことを許しているのは、僕に従う者だけだ。逆らう者は何人たりとも見下ろすことを許さない」
そう言いながらゆっくりと火神の肩に手を置く征十郎。
「(ダメ…!)」
反射的に体が動き、征十郎の元へ駆け寄ったが遅かった。