第14章 できないわ
案の定、コタちゃんは宮地さんに抜かれ、挙句には上手くパスも周り秀徳に点が入る。
「葉山の悪い癖だな」
「そうですね。ですが…やられっぱなしなわけないでしょう?」
コートではレオ姉をはじめ、コタちゃんは他の四人から注意されるも、その表情に反省の色は全くなし。
試合は再開され、今度はボールはコタちゃんの手に。
「(早速、やり返すつもりね…ってことは…)」
私はコタちゃんがドリブルを始める一瞬前に両手で耳を塞いだ。
それでも耳を劈くように響く音。
ボールは強く突けば突くほど、動きは速くなり、目で追いにくくなる。
だが、この速さだと、コタちゃんは今回、レベル3でしかボールを突いていない。
にもかかわらず、コタちゃんはあっさり宮地さんを抜き去り、さらにはブロックも躱してダブルクラッチでシュートを決める。
「あらぁ…あと二段階も上があるというのに…こんなものなのですね」
「ふっ…そう残念がるな」
耳から手を離し、再びスコアを書き始めながら呟けば、監督は笑いながら言う。
「(だって…期待外れ、というか…何というか…)」
歴戦の王者、と謳われるほどの強豪の秀徳。
彼らならば、洛山を倒してくれるのではないか…と期待していたのに。
私が直接手を出せない今、もはや誰かに頼るしかないというのに…。