第14章 できないわ
まあ…なんせ相手は真ちゃんだ。
征十郎もそれだけ楽しみにしていたのだろうか。
「へぇ…そりゃいいな。ここまで歯ごたえねー相手ばっかだったからな。もっと食っときゃ良かったな」
「永ちゃん、それ以上食べてどうするんですか…」
永ちゃんの言葉に呆れながら、私はため息交じりに呟いた。
「タオル、そこ置いときました」
「ああ」
ベンチ準備を手伝ってくれていた控えの選手が征十郎に言う。
それに答えた征十郎も、準備ができたらしく、立ち上がった。
彼らが立ち上がったのを見て、私もスコアブックを片手に監督の横に並んだ。
キュッと征十郎のバッシュの音がする。
「じゃあ、行こうか」
コートに立った征十郎に真ちゃんが近づき、何やら話しているのがうかがえた。
「(…真ちゃん、お願い。少しでも…征十郎を…)」
目を瞑り、深呼吸をしながら、私は心の中で唱えた。