第12章 本当にそうかしら
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宿泊所へ戻る途中。
洛山の調整用体育館の前を通りかかった時、前方に見慣れた三つの影が見えた。
「あら、華澄ちゃん。今戻ったの?」
「はい。あの…皆さんはここで何を?」
練習着に着替えたレオ姉、コタちゃん、永ちゃん。
その様子から、何を考えているのかは容易に想像つくけれど。
「体動かそうと思ってな」
「シード校は、初日に試合がなくてつまんないよ。カスミンも一緒に行く?」
「はい、行きます」
お誘いを受けた私は、三人に同行して体育館の扉を開けた。
中には一人佇む征十郎の姿があった。
「征ちゃん、ここにいたの?」
レオ姉はボールを突きながら問いかけた。
「ああ…どうした?」
「明後日に備えて軽く体動かしとこう、と思ってよ」
「…ならばちょうどいい。少し相手を頼む」
「おー、いいよ!やろーぜっ」
征十郎の頼みに、コタちゃんが声音の少し高い声で答えた。
「もう…あまりエキサイトしないで下さいよ?」
「大丈夫だって!で、何?一対一?」
私にいつもの人懐っこい笑みを見せながら、コタちゃんは言い、またすぐに視線を征十郎に戻した。
「いいや…三対一だ」
返ってきた征十郎の言葉に、私だけではなく他の三人も表情が固まる。
「…あ?オイ、赤司?」
「いくらなんでもそれは負ける気がしないんだけど?」
「…どーなっても知んねーよ」
「……」
この三人は、『キセキの世代』の存在から脚光を浴びることこそなかったが、実力もプライドも彼らと変わらないもの。
征十郎の発言に、三人の顔つきは険しいものに。
だが、それでも征十郎は涼しい顔…いや、余裕の笑み。
「(…何を考えているの、征十郎)」