第12章 本当にそうかしら
洛山がどこにいるのかはすぐに分かった。
壁にもたれながら試合を観戦している征十郎の姿も見つけ、私はフロアで進められている試合に目を向けながら彼に近づいて行った。
「あーあ…あの7番のお膝、可哀想に。大ちゃんも右ひじに相当来てるわね…」
私の声に気づいた征十郎は、こちらをチラリとだけ見ると、フッと笑う。
「珍しいな、お前が他人の試合を見に来るなんて…華澄」
その言葉に、私は少し首を傾けて笑みを見せる。
「だって久しぶりに皆の試合が見れるんですもの。IHは誰かさんが『お前のお披露目はまだだ』なんて言ったおかげで、全く見れなかったし…気になるじゃない」
少々嫌味を込めながら、私は征十郎の隣に並んだ。
「その割には来るのが遅いな。開会式はおろか、涼太の試合ももう終わったぞ」
「いいの。あいつのことは嫌いだから」
「そうだったな」
私の言葉にフッと笑いながら征十郎は言う。
「大体、IHはお前も条件を出してきたではないか。敦を棄権させろ、と。そんなことせずともあいつらだけでも勝てたはずだ」
「私が勝敗なんて気にするわけないじゃない。私がそう言う理由はただ一つ…。大人しく言うこと聞いてたんだから、そのくらいいいでしょう?」
「まあ、そう根に持つな」
嫌味言えば、あちらも嫌味で返してくる。
そんなやり取りをしながら、私は目下で行われる試合に目を向けた。