第11章 夏の大三角形なのよ?
そして、その”誰か”というのは言うまでもない。
「火神大我…彼だと言いたいのね?」
答えこそしないが、征十郎は目を細めて私を見た。
「WCが待ち遠しいよ」
それだけ言うと、征十郎は既に店内に入った彼らの背中を追う。
「征十郎…」
そんな彼に声を掛けながら、私は空を見上げた。
声を掛けられた征十郎は、足を止めてこちらに振り返る。
「見て。空が綺麗よ」
冬も近いこの時期の空は、星が良く見える。
こうして、昔は征十郎と一緒に空を眺めたな…と思い出す。
「それがどうかしたのか?」
「…中学の時、夏祭りの時も空が綺麗だったわよね。あの時に見た星座が何だったか、覚えてる?」
視線を征十郎に戻しながら、私は問いかけた。
ほんの少しの期待。
もし、もしも覚えてくれていたら…。
「そんなこともあったな。だが…」
私は、自嘲気味に笑い、小さく息をついた。
「何の星座を見たか、なんて覚えていない」
「…そうよね」
「何かあったのか?」
「いいえ、なんでもないわ」
私が答えれば、征十郎はまた私に背を向ける。