第10章 どんな顔をするのかな
もう逃げない。
そう決めて征十郎と一緒に洛山まで来たのに、結局彼の言いなりになって、ただ彼の行いを傍観しているだけ。
こんなの帝光の時と何も変わらない。
「それと、こっちに来る前に松本優奈に会ってきた」
「え?」
修ちゃんの言葉に、私は俯いていた顔をあげた。
「心配すんな、本当のことは何も言っちゃいねーよ。ただ、あいつは華澄の嘘に気づいてんだろ?それでも『いつまででも待ってる』って言ってたぞ?」
「…そ、う」
「いい加減覚悟を決めろよ。いつまでウジウジしてるつもりだ。お前、それでも俺の従妹か?」
覚悟…。
そっか、私は全然覚悟なんてできていなかったんだ。
逃げない、って言って洛山に来たけど、それだけで満足していたのかもしれない。
でも、それも結局逃げでしかなかった。
「…もし…これで征十郎に嫌われたら…慰めてくれる…?」
「胸くらいは貸してやるよ」
「それで側にいれなくなったら…今度こそアメリカに行ってもいいかしら?」
「目的を果たした後だったらな」
ああ、やっぱり修ちゃんには敵わないわね…。
私は、フッと笑った。
「…私、今から優ちゃんに電話するわ。ご飯食べててちょうだい」
「おう」
私が覚悟を決めた顔で言えば、修ちゃんはいつものように笑ってくれた。