第2章 聞いてないわ
納得がいかない点もあることにはあるが、認めなければ彼の側にいることは許されない。
そうよ、彼の言うことは全て正しいのだから。
「…わかったわよ」
「あー、カスミンだ」
部室のドアが開いて、中から出てきたのは葉山さん、実渕さん、根武谷さんの無冠のお三方。
「…え、カスミン?」
少し前まではさっちゃんに呼ばれていたそのあだ名に、少し戸惑いを覚えた。
「え?なんかダメ?」
「ダメではないですけど…」
「じゃ、カスミンだね。決定!」
私の知っている某駄犬と雰囲気の似ている葉山さんに苦笑いを浮かべた。
まあ、あの大馬鹿駄犬ほどのウザったさはないからいいとするわ。
「こら、小太郎。華澄ちゃんが困ってるじゃない。ごめんね、華澄ちゃん」
「いえ、以前も同じあだ名で呼ぶ人もいましたから」
申し訳なさそうに眉を下げる実渕さんに笑みを見せた。
「カスミンもこー言ってんだしいーじゃん!ね、俺のことは『小太郎』って呼んでよ」
「…流石に先輩を呼び捨てにはできませんよ」