第3章 もう一つの月見日和
「本当、あの人が来てから騒ぎ続きだね。」
唐突に呟かれたその言葉。
平和という言葉が相応しい市中をのんびり歩く二つの影。
今日は浅葱色の羽織を纏わず。それでも皮肉めいた発言はいつもと変わらず。
「伊東参謀が入隊して以来、幹部の雰囲気はあまり芳しくはない。しかしこれは近藤局長の、ひいては新選組の意向だ。簡単に打破できる問題でもないだろう。」
もう一人も別段変わった様子もなく。
非番の日。晴天。絶好の休日日和。
普段は好かれない新選組だが、今日はそんな事実さえ意味を持たない。
空高くから太陽が照りつける中、沖田と斎藤は市中を行き交う人々に紛れていた。