• テキストサイズ

希望の果てにあるものは

第14章 非常事態


他にすることもないので眠り続ける三人の様子を確認する。
心拍数と呼吸は安定しており、青白かった顔には赤みが差している。
ただ眠っているだけのようにも見えるが油断は禁物だ。
けど、三人の容態が悪化した時、私に何ができるのだろうか……。
医者でもない私にできることなどたかが知れている。
苦しんでいる三人を前にうろたえることしかできないかもしれない。

早く目覚めてくれと真琴の手を握る。
すると、扉の方から何か物音が聞こえたような気がした。


「シロさん、何か落としました?」

「……違う。向こう」


シロさんの視線の先にはこの部屋唯一の出入り口である扉がある。
嫌な予感が頭をよぎった。
あの扉の先にあるものなど一つしかない。
銃を固く握りしめてシロさんに扉から離れるように言う。

落ち着け、いつもどおり頭を撃ち抜くだけだ。
殺すことはできないが普通の【Failure】なら気絶させることができる。
気絶させたらその隙に廊下に体を移動させればいい。
落ち着け、落ち着け、落ち着け……!

ガン、と扉が叩かれる。
自分の肩がびくりと跳ねたのがわかった。
なぜ今さらこの程度のことで怯えるのか自分でもよくわからない。
けど、もしかしたら私は自分で思ってる以上に弱っているのかもしれない。
急に三人が倒れて、意識が戻らなくて、不安なのだろう。


(こんな状態で戦えるのか……?)


違う。“戦わなければいけない”のだ。
自分を守るためにも、みんなを守るためにも、私が。

ミシッと扉が軋む音がする。
扉が破られるのも時間の問題だ。
怖いなんて弱音を吐いている猶予など残されていなかった。
覚悟を決める暇も、心を落ち着かせる暇も、怯える暇すらもない。


「ア゙アアァァ――――!」


不快なうめき声と共に扉が破壊される。
現れた【Failure】の数は二体。

眠る三人とシロさんの前に立ち、銃口を【Failure】へと向けた。

 
/ 114ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp