第3章 探索
最後に言葉を交わしたのはいつだったか。
狭い廊下を肩を並べて歩く私と津山さんとの間に会話はない。
まあこんな状態で他に話し相手などいないとはいえ、所詮他人は他人。
急に会話をしろと言われても無理があるのだろう。
私も何度か津山さんに話しかけはしたが、ことごとくスルーされてきた。
(……気まずい)
人がいる空間で静かなのは苦手だ。
自分以外誰もいなければ周りが無音でも気にすることはないが、自分以外の人間がいるというのになんの会話もないとなると気まずいことこの上ない。
頼むから何か話してくれ、とは思うが心の声など通じるはずもなく。
無表情で前だけを見て歩く津山さんにため息をこぼした。
「あの、津山さん?」
「…………」
「えっと……津山さんはどこへ向かっているんですか? 話したくないなら筆談でも……って紙もペンもないですよね、あははは……はは……」
無理だ手強すぎるこの人強い。
わざとボケてみたのに完璧に相手にされなかった。
極端に無口なのか、私と話をしたくないだけなのか……後者だったら凹む。
しばらく歩いていると、左側の壁に扉らしきもの、というか扉が見えた。
津山さんはわずかに体を向きを変えその扉へと向かう。
おもむろにポケットから銃を取り出し、津山さんはドアノブに手をかける。
銃を取り出すということは、まさか扉の先にあの化け物がいるのだろうか。
出来れば二度と会いたくなかったあの得体の知れない化け物が。
「篠塚。オレの後ろに」
「え!? あ、うん……」
津山さんから話しかけてきたことに過剰反応してしまった。
あれだけ話しかけてもかたくなに無視し続けていたというのに。
どういう風の吹き回しかは知らないが、ここは大人しく従うことにした。
銃口を扉に向ける津山さんの背後に回る。
それを確認した津山さんは、ゆっくりとドアノブを回した。
瞬間、内側から扉が開け放たれた。