第10章 心情
(……なんだか、気合い入ってるなぁ……)
健斗君の横顔からはやる気が満ち溢れていた。
何か心境の変化でもあったのだろうか。
まあ、元気ならそれに越したことはないけど……不思議ではある。
最後に【Failure】が現れたのは今から五分ほど前。
いつもなら【Failure】が現れる間隔は三分も開かないというのに。
……“いつも”、なんて。
(すっかり【Failure】が現れるのが当然のことになってるなぁ……)
【Failure】という呼び方にも慣れてしまった。
自覚はなかったが、私は意外と順応力が高いのかもしれない。
いつまでも現実から逃げているよりはマシだと思うが、こんな異常な状況に
慣れてしまっているという自分が嫌でもあった。
(……逃げているよりマシ? ……自身の異常から逃げているくせに?)
狂った実験の被害者たちと戦わなければいけないという現実は受け入れ、自分の体がおかしくなり、それが実験によるものかもしれないという現実からは必死に目を逸らし続けている。中途半端だ、私。
いっそのこと、全てから逃げられたら楽なのかなぁ……。