第10章 心情
【健斗視点】
渡された銃は、きっと一キロにも満たないのに、とても重く感じた。
これで僕はあの化け物の命を奪わなければならない。
殺さなければ殺されることくらいわかってる。
けど、命を奪うことに抵抗を感じている自分がたしかにいた。
化け物は全身の皮膚が腐り、至るところからおかしな色の骨が覗いている。
顎がないやつもいれば、胸からお腹までぽっかりと穴が空いているやつもいた。
でも、それでも、生きているんだ。
虫を殺すのとは訳が違う。
(虫は殺せて化け物は殺せないなんて、おかしいってわかってるけど……)
わかっていても、簡単に覚悟を決めることはできなかった。
強くなろうと頑張ってきたけど、やっぱり僕はいつまでも弱いままなんだ。
津山さんや蒼ちゃんのように強くなれない。
さっきだって、急に現れた化け物に戸惑い、結局何もできなかった。
いつまでも蒼ちゃんに頼ってばかりではダメだ。
頑張ってダメなら、もっと頑張ろう。
僕の体も心も、まだ限界を迎えてはいないのだから。