第10章 心情
【津山視点】
散々な目に遭った。
落ちている武器を無視して先に進もうとしたシロの前に現れた化け物。
オレはシロの手を引いて来た道を戻り、銃を拾って化け物を倒した。
あと少し化け物に気づくのが遅れていたらかなり危なかった。
シロは珍しく申し訳なさそうな顔をしていたが、まあ咎めるつもりはない。
いつのまにか、こいつに甘くなっているのは気のせいだろうか。
他にも逃げようとした女をシロが追ってシロとはぐれたり、ようやく見つけたと思ったら化け物に襲われていて。その隙に女が逃げてまたシロが追って……同じことを二度ほど繰り返し、今は三人で行動している。
女の目を見る限り逃げることを諦めたわけではないようだが、また逃げられないようにとシロが女の手を握っているため、女は大人しくついてきている。
女は宮崎春と名乗った。
「おい、宮崎」
「…………何」
「おまえは篠塚とどういう関係なんだ」
気になっていた疑問を宮崎にぶつける。
宮崎は心底嫌そうな顔をして、「言いたくない」と答えた。
言えないような関係なのか、ただオレと会話をしたくないだけなのか。
こいつならどちらでもありえそうだな、とオレは思った。
(……やっぱり、こいつは嫌いだ)
はっきりとした嫌悪感。
こいつのことを好きになれる気はまったくしない。
篠塚や香月のことも、邪魔だとか鬱陶しいと思いこそすれ、こうもはっきりと『嫌い』だと感じたことはなかった。
だが宮崎は違う。こいつに近づきたくない、今すぐ消えてほしい。
こんなに強く人を嫌ったのは、もしかしたら生まれて初めてかもしれない。
シロの隣を歩く宮崎を、二人に気づかれないように睨みつけた。