第8章 二人
「……ごめん、取り乱しちゃって」
「いいよ、気にしてないから」
健斗君が泣き止むまで、幸運なことに化け物は現れなかった。
まだ上手く腕を動かせないため、今見つかったら逃げることしかできない。
落ちていた銃は健斗君に持っていてもらっている。
初めて触れた銃に健斗君は怯えていたが、本人は大丈夫だと言っていた。
彼は強い。いじめられてそうだなんて思って悪かったな……。
動けるようになった私は、健斗君と共に私が見つけた部屋へ向かった。
途中でなぜこんなところにいるのかを聞くと、彼は私を追ってきたと言う。
追いかけてきてくれたのは嬉しいが、少々複雑な気分でもあった。
津山さんと一緒にいる方が安全なのは明らかだ。
健斗君の身の安全のためにも、彼には津山さんと一緒にいてほしかった。
……けど、私は彼にただ『ありがとう』と伝えた。
(終わったことを言っても仕方ないしね……)
責めたところで彼を悲しませるだけだ。
嬉しいと感じたのなら、素直にお礼だけ言っておけばいい。
健斗君は自分で私を追うと決めたのだ。私が口出しすることじゃない。
「これ、蒼ちゃんが倒したの?」
これ、とは扉の前に倒れている化け物の死体のことだ。
うんと頷くと、すごいと褒められた。すごい……のだろうか?