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希望の果てにあるものは

第1章 序章


「ゴホッゴホッ、ゲホッ!!」


扉が床に倒れたことによって舞う大量のほこり。
変な臭いがするし口に入って気持ち悪い。
掃除はかなり長い間されていないようだ。
まさかここはもう使われていない廃墟となった刑務所なのだろうか。
だとすると、警察に捕まったわけではないので嬉しいような、誰もいない廃墟なんかに放置されて腹立たしいというかイライラするというか。
こういう場合、どういったリアクションをすればいいんだ。

口元を手で押さえて牢屋から出る。
牢屋内も薄汚れていたが、廊下はさらに汚れている。
間違いなくここは廃墟だ。使われなくなってもう何年も経っているだろう。
ほこりが溜まっているおかげで残っている靴跡は、恐らく私をここに運び込んだ人間のものだ。きっと私の腹を殴って気絶させたあいつのだ。

ひんやりとした全体的にボロボロな廊下を蛍光灯が照らす。
意外にも電気が来てるらしい。廃墟に電気を通したって無意味だろうに。
私としては懐中電灯などの明かりがないため、助かるが。

今にも消えてしまいそうな蛍光灯に消えないでと頼みながら廊下を歩く。
足下では壁から剥がれたコンクリートの欠片がパキパキと鳴る。
蛍光灯が切れる前に建物が崩れ落ちてしまうのではないだろうか……。
こんなところで生き埋めになるなんて絶対に嫌だ。
そんなことになる前に、早く脱出して家に帰って警察に通報してやる。


「……?」


後ろで何か物音が聞こえた気がした。
けど、後ろは行き止まりで、たしかに誰もいなかった。
ここと同じように壁が崩れて床に落ちたのだろうかと思ったが、聞こえた音は、もっと柔らかい……液体のようなものが落ちたよう音。
不思議に思った私は、何の気なしに振り向いた。


いったい、どちらが幸せだったのだろうか。

気づくことと、気づかないこと。


「ひっ……!」


ここから十メートルほど先に、“それ”はいた。

 
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