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希望の果てにあるものは

第6章 白い青年


「…………」


部屋の隅に体育座りしている男。
白い病院着のようなものを着ているその男は、じっとこちらを見ている。
白いのは服だけでなく、髪もだ。白くて背中まである長い髪。
誰がどう見てもこの人は“普通”ではなかった。
せめて何か喋ってくれればいいのに、男はさきほどから口を開かない。
ここは私から話しかけるべきなのだろうが、さて何を言えばいいものか……。

この部屋を見つけたのは今から約十分ほど前。
部屋に入ってこの人を見つけたときは本当に驚いた。
なんせ、白ずくめの男がじーっとこちらを見つめていたのだから。
床も壁も真っ白なため、男はほぼ部屋の景色に同化していた。
そのため見つけるのに時間がかかり、その分驚きも倍増したということだ。

津山さんと健斗君は部屋の外で待っていてくれている。
二人とも、無言でこちらを見る男の視線に耐えられないそうだ。
ただ見ているだけで危害を加えようとしているわけではないというのに、なぜ二人はこの人に見つめられるのがダメなのだろうか。私は平気なのに。

まあ、いつまでもこうしていたら津山さんに置いていかれる。
私は思いきって男に話しかけてみることにした。


「あ、あのー……こんにちは?」

「…………うん」

「うわ喋ったぁ!! あ、いや、その、すみません……」


男が喋ったことに過剰反応してしまった。
さすがに失礼だったと思い、慌てて軽く頭を下げて謝る。


「……喋っちゃ、ダメだった?」

「違います! 少し驚いただけで、むしろどんどん喋ってください!」

「……うん、わかった。……がんばるね」

「はは……それはどうも……」


……なんというか、変わった人だ。

 
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