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希望の果てにあるものは

第4章 遭遇


「あっ、津山さん!」


健斗君と話しながら歩いていると、ナイフを持った津山さんを見つけた。
なぜかナイフで壁にガリガリと傷をつけている。
文字を書いているわけでもなさそうだが、何をしているんだ。


「もしかして私たちのこと待ってて」

「黙れ違う」

「……すみません、調子乗りました……」


待っててくれたのか、と言いきる前に強く否定された。
睨まれて思わず謝ってしまった。
顔立ちは整っているのに、わざわざ顔を歪めるだなんてもったいない。
笑っていればさぞやモテるだろうに。……笑顔など見たことないが。


「違うんだオレは休憩していただけで決してこんな足手まといなだけのガキ共を待っていたわけじゃない違う違う違う……すー……はー……」

「つ、津山さん?」

「……ふん」


津山さんはぶつぶつと何かを呟いたのちに深呼吸をしたかと思うと、ナイフを鞘に収めて歩き出した。
奇妙な行動に疑問を持ちながらも、私はその背中を追う。
すると、服の裾をくいっと引っ張られた。


「ほ、本当にあの人についていっていいのかな……?」


健斗君は不安そうだ。
まあたしかにさっきの顔は命の恩人ということを忘れそうなほど怖かった。
健斗君が不安に思うのも無理はない。
普通ならついていったら殺されるかもしれないと思うだろう。だが。


「大丈夫だよ、あの人はきっと私たちのこと守ってくれるから」

「いや、でもこっち睨んでる……」

「あー……うん。あれは『ふざけるな』って目だね。誰がテメーらのことなんざ守るかって言いたいんだと思うよ」

「よくわかってるんだね……」

「ははは……まあね……」


肝心なことはわからないのにこういうことだけわかっても嬉しくない。

小動物くらいなら殺せそうな視線を向けてくる津山さんから目を逸らし、乾いた笑い声を漏らした。

 
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