第16章 崩壊
覚えている。
津山さんのことも健斗君のこともシロさんのことも真琴のことも。
津山さんが壊れて、それを見た私も狂ってしまって。
狂っている間のことも覚えている。
狂って『帰る』ということに固執し、他のことが考えられなくなった。
自分の邪魔をするものは殺してしまえと、私は、私は。
シロさんを殺した。
健斗君を殺した。
真琴を殺した。
津山さんを殺した。
なんで今さら正気に戻ってしまったんだろう。
こんな苦しい思いをするなら、狂ったままでいたかった。
激しい後悔と罪悪感が全身を満たし、頭と心をぐちゃぐちゃにかき乱す。
ごめんなさい、ごめんなさい、謝ったってみんなは戻ってこない。
街を埋め尽くす【Failure】がこちらへ向かってくる。
逃げ場なんてない。ここで私は死ぬのだ。
家族はどうなったんだろう。
最後に会いたかった。会って、ああでも、私、みんなを殺したんだ。
こんな私が家族に会う資格なんて、あるはずがない。
【Failure】に殺されるぐらいならと、銃口をこめかみに当て、引き金を引く。
けど、弾切れだったようで、銃弾が放たれることはなかった。
どうやら人殺しの私には楽に死ぬ資格もないらしい。
腕に、足に、肩に、頭に、噛みつかれる。
痛い痛い痛い痛い痛い。
誰か助けて。死にたくない死にたくない死にたくない!!
「あ、あああ、あ」
けど、みんな、私が殺したんだ。
大切な仲間を、親友を、殺して得たものは――――――死、だけだった。
【DEAD END】