第14章 家族
「俺はその場にはいなかったんだけど後で家政婦さんに聞いて。梓は何もしていないのに。翼を放置していたのは静香さんなのに。梓が可哀想でそのポットを用意した家政婦さんも悪いのは自分だって言ったみたいだけど父さんが梓を怒るのをやめなくて。立場上あまり家政婦さんも口出しは出来ないからね。静香さんに怒られたときは泣いていたのに父さんに怒られたときは泣かなかったんだって。そのあと俺のとこにきて“お父さんは私のこと嫌いになったみたい。もう私にはお兄ちゃんしかいないよ。”って言ったんだ。…それを聞いて思った。梓を連れてこの家を出ようって。ただ水崎の名を捨てたらそれこそ静香さんの思い通りだ。だから俺は父さんたちの前では出来のいい息子でいた。高校に入って梓と二人で住みたいっていったらあっさりOKが出たよ。それで今こうやって二人で暮らしてるんだよ。」
もう少し長くなると思ったが兄が簡潔に話をまとめてくれたおかげで話はスムーズに終わりまた一つワタシの過去を知ることが出来た。
「ただね…」
兄の声に反応しまだあるのか…とその話を聞く。
「最近になって父さんがやたら梓のことを気にするようになってね…。事故にあったからとかじゃなくてその前から…。今まで跡取りになる俺のことは気にすることはあっても梓のことはまったく気にしていなかったから…。なんでだろうって疑問に思った。…でも梓の学校での話を聞いていてわかった。多分……征十郎くんのことだよ、父さんが気にしてるのは。」
兄の前ではん?とはてなマークを浮かべるがああ、そういうことかと頭の中では納得する。