第9章 Battle9　VRMMOだからこそ、伝わる温度差

「じゃあ、ずっと姫様はずっと本丸に戻らないの!?」

乱ちゃんの悲痛な叫びを聞いて、ふと思い出した。
どうしたら、刀剣の僕が今の主になれるんだろう?
そもそも、数年本丸を留守にしてるはず。
その間、誰もいない本丸のままなんだろうか?

「本丸って、誰も居ない状態でも大丈夫なの?」
「あぁ、一応僕らの正式な主は、恵ちゃんの弟だよ」
「へ……!?」

いきなり、弟の名前が出てきて驚いた。

「どういう事情かはしらないけど、何故か元主を主って呼ばせてたけど、本当の主は弟のほうさ。まぁ、詳しい事情は本人から聞いてね。僕らも、ほとんど知らないんだ」

あはは、と爽やかに笑うみっちゃんを他所に、粟田口兄弟の雲域が怪しくなっている。
というか、薬研がすごいギラギラした目で見てくる。
睨んでる、という表情でないのは確かだ。
っていうのも、全てさっきの倶利伽羅のせいだろうなぁ。

今の所、みっちゃんと倶利伽羅のご機嫌は大丈夫そうだ。
みっちゃんも、さっきの危ない雰囲気は一気に消え、逆にご機嫌そうに笑ってる。
それに比例するように、倶利伽羅も、殺気が嘘のように消えて、普通に戻ってる。

それで、逆になったのが粟田口兄弟だ。
あんなに穏やかそうだった一期一振さんの表情が険しくなってるし、乱ちゃんの顔つきも尋常じゃなさそうだ。

っていうか、なんで刀剣は本当のことを話さないくせに、敵意だけは一人前に向けてくるんだろう?
ちょっと、短気すぎないやしないか?
全員が全員これだったら、主なんてやってるほうが疲れる。