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光と闇に潜む龍【サボ】

第8章 Love


助けて・・・。

辛い・・・。

その日を境にエスメラルダはサボを避けるようになった。

サボの気配を察知するとすぐに逃げる。

夜も自分の部屋で寝ない。

毎日場所を変えて星を眺めて寝る。

雨の日は寝ない。

そのせいかエスメラルダは疲労とストレスを溜め込み続けてしまった。

「メラルちゃん大丈夫?」

「ッ平気だ。」

愛想のない返事をする。

「一回診てもらったらどう?」

「必要ない。」

私が抱えているのは体の問題じゃない。

精神、心の問題だ。

「私には拭いきれない過去がある。」

思い出したくない過去が。

それをサボが思い出させてしまった。

子供のときに失ったのは愛情だったのかもしれない・・・。

両親が死んだのは構わなかった。

『影を操れないお前はいらない』

そうやって忌み嫌われて育った。

自分を愛してくれたのは弟と親友だった。

でもその3人はもういない。

暴走した影・・・微風が全てを消し去った。

微風とは影の名だ。

孤独で弱い。

やがて彼女は海賊に捕らえられ奴隷のように使われた。

ときには暴力も・・・

彼女は悪魔の実を食べて自由を掴んだ。

孤独な自由だった。

彼女の中に

負けたくない。

寛大でありたい。

強くなりたい。

逃げたくない。

もう失うものなんてなかった。

そんな意思が生まれてしまった。

彼女は強かった。

龍の力で自分たち血族を苦しめた政府・海軍。

自分に恐怖を植え付けた海賊。

その全てを真っ向から叩き潰していった。

恐怖は恨みに変わり

恨みは彼女を狂わせ力に変わった。

エスメラルダ。

名前の意味はエメラルド。

彼女の心は濁ったエメラルドであり光沢はなかった。

愛・・・

彼女はそれだけを嫌った。

愛されてはいけない。

愛してはいけない。

愛は全てを狂わせる。

愛する者をつくってしまうと失ったときのショックが大きい。

愛なんて邪魔なだけ。

愛なんていらない。

私は誰も愛さない。

それは罪だから。

ラファティであるだけで罪。

微風を暴走させた罪。

愛する者を殺した罪。

それは愛されない罰となる。

愛を知らない罰となる。



「私は愛が何か分からない。」

知らなくていい。

「私は愛が怖い。」

愛は時に人を苦しめる。
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