第5章 shoot-out
「まだサボ君のこと怒ってるの?」
「・・・。」
エスメラルダはサボがいることを知って、
「いや、もう怒りはない。あのときの言葉は自我をなくしていたからな・・・。」
「怒ってないの?じゃあサボ君に会ってもいいんじゃ・・・」
「怒りはなくても・・・」
サボは次の言葉でショックを受けた。
「恐怖はある。」
俺が怖い・・・?
「そういうことね・・・。」
コアラは椅子に座る。
「許してあげたら?」
「赦すことはできても忘れることはできない。」
・・・。
俺のことを・・・俺のした事って・・・。
「あいつは私を殺そうとした。その事を・・・その恐怖を赦せても忘れることは不可能なんだ。」
怖い。
それでも恐怖心を抑えることはできる。
それと引き換えに、
「あいつに会うときは・・・」
サボはまた打撃を受けることになる。
「意思も、感情も、思いも、表情も全てを取り繕って偽りのまま接するしかないんだ。」
サボは耐え切れず自室に戻る。
「コアラ、サボにはこう言っておいてくれるか?」
「え、何?」
「私のことが嫌いならもう二度と顔を見せるな。私はもう、お前にありのままの姿で顔を合わせることも、言葉を交わすこともない。とな。」
サボ、お前がそうさせた。
いくら謝っても、お前と会う時の私は偽者なんだ。
「・・・分かった。お大事にね。」
コアラが出て行った。
私は負けた。
それはハッキリしている。
だがサボはどうだろう・・・。
勝ったことは確かだが勝った気分がしないだろう。
あの時、あいつの傷ついたような顔に苛立ちを覚えた。
傷ついているのは私の方だというのに。
その怒りが爆発してあんな言葉が口から出たのだ。
「・・・私があいつを傷つけたんじゃない。あいつが私を痛めつけたんだ。」
全てサボが悪い・・・。
そう思い込ませていた。
結局コアラからはサボの本心を聞き出せなかった。
上手いことかわされた。
「まったく、コアラは嘘が上手い・・・。」
エスメラルダは呟いた。
するとドアをノックする音がした。
気配がなかった。
「・・・誰だ?」
サボなら気づくはずだ。
だが・・・
「俺だ。」
それはサボの声だった。