第17章 One more
「・・・お前にそんな過去があったとはな・・・。」
「誰が私に嘆いてくれようと、それは嫌悪でしかなかった。
同情してほしくなかった。」
「今一度俺はお前を知れた気がするな。」
「ハハッ・・・理解できないだろ?こんな話・・・・。」
エスメラルダは俯いて言った。
「できねぇよ。・・・してほしくないんだろ?」
「まぁな。」
「じゃあ今まで辛かった分、俺たちと楽しく生きようぜ!」
サボはエスメラルダの異変に気づいて自身のシルクハットを被せた。
「う・うぅぅぅぅぅぅぅ・・・」
ポタポタと足元に落ちる雫。
エスメラルダは泣いていた・・・。
「ほん・・・とはぁッ、こ・・んなつもり・・・・じゃ・・・う・う・・うぅぅぅ・・・」
「分かってるさ。」
「もっとッ・・・しあわ・・せに・なりた・・かったの・・・・にッ・・・・・」
「俺が幸せにしてやるから。もう何にも怖くねぇ。」
サボはそっとエスメラルダを抱きしめた。
「うぅぅぅぅぅぅ・・・」
サボの胸に顔をうずめて泣く。
「泣いていいぞ。」
エスメラルダがここまで本気で泣いたのを見るのは初めてだった。
「泣き・・たく・ないッ・・・のに・・・うぁ・・・・」
「我慢するから辛いんだ。だから押し殺してねぇで、もっと吐き出せ!受け止めてやるから。」
サボの言葉でもう流れる涙は止められない。
「誰だって苦しいことはあるんだ。俺だってあったって言っただろ?辛さの大きさは違っても辛いのは同じだ。」
「・・・う・・・・うぅぅ・」
「大丈夫だ。お前だけじゃねぇ。」
サボは腕に力を込めた。
「俺がお前を苦しめるものから守ってやる。俺に全て任せろ。」
エスメラルダはサボの体に手を回してギュッと服を握り締めた。
「少し落ち着いたか?」
「・・・あ・・ぁ・・。」
それでもエスメラルダはサボを離そうとしない。
「ん?」
「顔が赤いし、泣いたのバレるのは・・・」
「んなこと気にすんなって!」
「ヤダ。」
「このままでいるのか?」
「そうだが?」
「俺、ちょっと痛いかも・・・。」
エスメラルダは力を入れすぎていた。
「ごめん。」
そっと力を緩めた。
サボはそのまま離さないでしばらくいてくれた。