第16章 Past
サンド島はかつてラファティの一族が暮らしていた島だった。
ここでは稀に、影の奏者が生まれる。
ある家にラファティ・リオノーラと言う女がいた。
リオノーラは言わずと知れた影の奏者だった。
そして一族を守るための戦士でもあった。
やがてリオノーラはセザンという男と結婚し娘を授かった。
娘には生まれてすぐに消える、影の奏者の印があった。
リオノーラは期待した。
娘も同様に影を操れるようになることを・・・
「違う。こうよ、エスメラルダ。」
「こう?」
まだ幼きエスメラルダは母に影の使い方を学ぶ。
「違う違う。力を抜いてみなさい。」
「んー!やぁっ!!」
影は壁を壊した。
「力みすぎてはダメよ。」
「お母さん飽きたわ。」
エスメラルダはいくらやっても上達しなかった。
やがてリオノーラは再び腹に子を身籠った。
そして生まれてきた子はルーザーと名づけられた。
「エスメラルダは影の奏者にはなれないわね。」
諦められた。
そしてその日からエスメラルダは愛されなくなった。
「お母さん?」
「あっちへ行って。」
「はい・・・。」
「ルーザー、おいで。」
エスメラルダは心に傷を負っていった。
じわじわと削られる心。
エスメラルダはゆっくりと壊れていった。