第1章 彼と私
聞こえるのは一定のリズムで鳴る機械音
そして私の心臓の音
この静かで真っ白な部屋にいるのは私と貴方の二人だけ
目を覚ましてと願っても何も変わらない日々
貴方が目を覚ました時には必ず言うの
「ごめんね……。守ってくれてありがと…。」
一人呟きながら、頬を伝う涙
この言葉が貴方に届くのはいつになるだろう
そして私は隣で眠りに落ちる
眠りから覚めた時に貴方が目を覚ますのを信じて
そして私は夢を見る
私の誕生日だったあの日を
貴方が事故にあったあの日を
私が後悔して止まぬあの日を
貴方は私とのデート中に他の女と楽しくお喋り
そんな貴方を見て私は怒って帰るの
でも、全て私の為だった
貴方は私にプレゼントを渡す
私は受け取らずに歩き出す
私は気付かず歩道を渡る
貴方は私に向かって叫ぶ
振り返ると車が猛スピードで走ってた
貴方は私の腕を引く
同時に反作用で貴方は車道に飛び出る
私の目の前には血が飛び散る
そして私は貴方の元に駆け寄り泣き叫ぶ
貴方の夢を見て私は目を覚ます
そして私は貴方を見る
やはり貴方は目を覚まさない
私は少し下を向く
「ごめん…ね……。ごめんね。」
何度も何度も貴方の手を握りながら縋る様に言うの
すると突然聞こえてくる
「ど…うした……の………?」
私は驚く
「嘘………」
「な…にが…?」
貴方はまだうまく喋れないのに無理して喋る
「それよ…り、無事……でよか…った。」
貴方を見て私は涙が止まらない
「泣……くな…よ。」
貴方は私の涙を拭う
「疑ってごめんね、守ってくれてありがと。」