第3章 浅黄色の旋風
浪士に距離をじりじりと詰められて、私は何も出来ずに立ちすくんだ。
「………お前、女か?」
じっと私の顔を見ていた一人の浪士がポツリと呟いた。
「女ぁ?」
「言われてみれば…そう見えるな」
冬だというのに冷や汗が出て、握り締めた拳の中がじっとりとしている。
まるで商品を値踏みするように、じろじろと見られる。
すぐに走り出してしまいたい衝動に駆られたが、恐怖で固まった足がそれを許さなかった。
「へへ……女なら他に使い道もあるな」
「そうだな。連れていくか」
『連れていく』
その言葉を聞いた途端、考えるよりも前に走り出していた。
だが、先程まで固まっていた足……何より女の走る速さでは――
「どこに行くのかな、お嬢さん?」
「………っ‼」
いとも簡単に手首をつかまれてしまい、抱えていた荷物が地面に広がった。
――もう、駄目かもしれない――
そう思った刹那――私と浪士の間に、浅黄色の風が吹き抜けた。