第2章 慶応三年 十一月
「ありがとうございました」
薬屋の戸を閉めて通りに出ると、再び吹き付ける風。
薬草の入った袋を抱いて、次の店へ向かう。
ついでに買ってきてほしいと言われて渡された紙を、飛ばされないようにしっかりと握って歩き出す……すると、
「おい、そこのガキ」
低い声があたりに響いた。
周りを見回しても人が見当たらない……恐る恐る振り返ると、そこには鋭い目つきをした大柄な男が五人、私を取り囲むように立っていた。
「な、なんでしょうか」
「金目の物、置いて行きな」
その口調や言葉の内容で理解した。
この人たちは不逞浪士だ、と。
「聞こえてるだろ、さっさと置いて家に帰りな!」
返事が出来ずに俯いていると、別の浪士が威嚇するように大声を出した。
一歩距離を詰められると一歩下がるを繰り返し、じりじりと追い詰められていく。
このお金は『買い出し用だ』と山崎さんから預かったものだ。易々と渡せない。かと言って、五人の浪士を相手に立ち回ることなんて……
どうしたら………⁉