第2章 慶応三年 十一月
木枯らし吹き、枯れ葉舞う冬のある日、私は京の町を歩いていた。
「寒っ…」
襟巻を口元まで引き上げて、はぁ…と息を吐く。白い塊となったそれが、隙間から漏れて消えた。
厳しい寒さから、一刻も早く逃げたくて歩みが自然と速くなった。
私がこの寒さの中、一人で町に出でいるのには勿論訳がある。
風邪が流行し、体調を崩す隊員が続出した。
新選組隊士の面倒を見てくれている医者の松本先生だけでは手が回らなく、医者の娘の私と監察方の山崎さんの三人で治療にあたっていたのだが、薬が足りなくなってしまったのである。
そこで薬のもととなる薬草を買いに来たのだが…もう一枚厚着をしてきた方が良かったかも知れない。
びゅうっ、と一際冷たい風が通り抜ける。
自分の両肩を抱きしめるようにさすり、もう一つ白い息を落とす。
待っている隊士のためにも早く済ませてしまおう。
人通りが少ない通りを、私は早足で通り抜けた。