第7章 廻り始めた歯車
土方side
新しい情報が入って二日。
いままでの手こずりようが嘘だったかのように、男の正体が分かり始めていた。
我も我もと皆が情報を仕入れてくる。
一人ずつ報告書にして山のように持ってきていた。
土方は、その重ねられた束の中の一枚の紙を手に取り、責任者の名前を見て、薄く微笑む。
沖田総吾。
達筆な字で連ねられた、何時もは目にしない真面目な字。
思いを堪えようとした、報告書。
沖田は普段なら自分だけで何とかしようとしたかもしれない。
しかし誰に感化されたか、情報を出し合い、隊員達とも協力しあっている。
土方は沖田の仕事に対する姿勢に、なんとも言えない複雑な思いを抱いていた。
内容がこんな事ではなかったら、真面目に働いている総吾を普通に喜べたのに、と。
そして、それを振り払うように、書類に目を通す。
千里と同じような過去を持つ男、雨宮宗。
彼の半生は隊員たちがゾッとするほど哀しく、凄まじい理不尽を受けた人生だった。
復讐しか彼に残された道はなかったのだろうと、敵ながら納得せざるを得ないほど、酷い仕打ちを受けていた。
そしてまた、彼が重臣を殺害していたと真選組は予測する。
彼の過去に、少なからず関わりの持つものが死んでいるからだ。
監視カメラから、同じような人物を発見した。いずれも、周囲の雰囲気に溶け込みやすいよう、今人気の着物を身につけ、違う女と行動を共にしていた。
これでは、殺人犯やら狙撃犯だとは判断できかねず、全く頭になかった。
相手はそれを知っていたのだろうが。
何にせよ一筋縄ではいかないだろう。
長年の勘が、土方の身を引き締めさせる。
勿論、自分達の正義を貫き通すことが役目だとは分かっているが。
________私情を挟むな。
土方が沖田にいった言葉。
しかしそれは、千里が関わっている時点で、二人には無理な話で。
それをお互い分かっている。
だからと言って理性を失って言い訳ではない、そういうことだ。
容赦なく二人を真選組は追い詰めるだろう。
しかしきっと、
二人が命を繋げるように俺達は全力を尽くすだろう。
土方は揺らがない決心のもと、静かに意志のある瞳で空を見据えた。