第6章 【幕間Ⅰ】 雨龍とは
宗side
_______殺してやる。
そう決心したのは、5歳のとき。
目の前に親を殺した相手がいるのにも関わらず、届かなかった時。
右手を失い、腹を切られ、血を流し、何とか左手を動かしたあの時。
"殺せるものなら殺すがよい。地を這う虫けらよ。"
冷たい瞳で見下ろした、実行犯と思われる切れ目の男。
立ち去っていく。
霞む視界を凝らして、手を伸ばした。
届かない。届かない。
喉からごぽり、と血だまりが込み上げる。
死んでたまるか。
ぎぎぎ、と首を動かして何とか掴もうと手を出すが、空を切る。
歯茎の間から血が溢れる。
死んでたまるか。
死んでたまるか。
死んでたまるか。
こんな風に大事な人を殺されて、屈辱を受けたまま。
死ねない。
絶対に死ねない。
「あ"、あ"ぁぁ、ぁぁぁあああ"あ!!!!」
獣のような咆哮。
それは彼の最後の力を振り絞った瞬間。
もちろん、相手には届かなかった。
______が、その代わり二真っ黒な闇が彼を包む。
激しい痛みと共に。